坂元裕二のインスタグラム(skmtyj) - 11月9日 02時37分


画像は、ある方のSNSの文章で、知人から教えてもらいました。多くの方にはピンと来ない業界話かと思いますが、脚本家のひとりとしてざくっと書いてみたく思います。脚本には、ト書きや台詞の冒頭の名前表記のところで、女性は(下の)名前、男性は苗字にするという、いわゆる慣習があります。これは現在も続いています。わたし自身、脚本を書きはじめた当時から長くそう表記していました。ただ、疑問はあったので、ある時から出来るだけ女性も男性も名前で表記するようにしていますし、学校のゼミでもそう指導しています。でも、台詞内においてそこを統一出来ているかと言うと出来ておらず、なかなか悩ましい問題です。これは理想の話ではなく、ドラマに没入するにあたっての齟齬なのですが、現実社会では女性が名前で呼ばれ、男性が苗字で呼ばれることが多い局面があって、すべての台詞でそこを強引に統一してしまうと、リアリティ的に違和感が生まれます。観ていて、いちいちひっかかってしまうんですね。会社内の場面で全員苗字呼びは書きやすいですが、親しい関係であるほど、そこは合わせづらい。(繰り返しますが、わたしの志向ではなく、ドラマ上のリアリティの問題です)現実では、女性と女性、男性と男性、女性と男性、それぞれの組み合わせの中で、名前呼びと苗字呼びは使い分けられていて、その使い分けによって関係性がグラデーションで塗り分けられています。わたし自身、たとえば画像2のように、ト書きでは女性男性問わず名前で表記していても、台詞では「真紀さん」「別府さん」「すずめちゃん」「家森さん」と呼び合うように書いています。だから本当は、ト書きだってそう書き分けた方が読みやすいんです。ト書きでは名前なのに、台詞では苗字となると読みづらいし。それもあって今回問題提起された慣習が続いてるんだろうとは思います。いやいや、そういうのは全部やめましょう、現実がどうあろうと、誰が誰を呼ぶ時も苗字か名前で統一しましょう、というのもひとつのやり方でしょう。しかしまあ現状、統一されたら、台詞を聞いていて気にはなるし、登場人物の関係性の表現の方向も変わるでしょう。過渡期なのだろうと思います。現実が変われば、この慣習も変わることは言わずもがなですが、とりあえずわたしはト書きだけは統一することで違和感を軽減しています。どうですか?周囲の人から名前で呼ばれることと苗字で呼ばれることのどちらが多いですか? 語感、パーソナリティもありますが、社会がそこに映し出されている気もしますよね。


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2020/11/9

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