中井智彦さんのインスタグラム写真 - (中井智彦Instagram)「●中井智彦の「ミュージカルトレインなかい号」Vol.2-② ★次の停車駅は「芸術と自恃」当時の僕は、毎日芝居ができる恵まれた環境にいましたが、その中で「芸術って何だろう」「歌の中で語るって何だろう」と思い悩む日々を送っていました。そんな時に出会った中也の言葉は、僕に気付きを与えてくれました。「盲目の秋」という詩の中に、「人には自恃があればよい！」という一説があります。「自恃」というのは、聞き慣れない言葉ですが、自分自身を頼みとする、という意味です。「自我」でもない、「自己」でもない、「自恃」。自分に見えている景色は自分にしか見えないのだから、他人がどう言おうと、自分は自分で責任を持って自分の言葉で表現するのだ、という強い想い、自分に見えている芸術感というものを真っ直ぐにぶつける中也のエネルギーを感じて、僕も自分に正直になることができたのです。何があっても自分の表現を信じ、書き続け、生涯芸術に邁進した男、中原中也を自分で演じてみたい。次第にそんな強い思いが芽生えました。日記と日記の間にある、書かれていない出来事を想像し、その間を生きてみたい。30年という短い生涯の中で、中也がどれだけ芸術に邁進していったのかということを、中也を演じることで感じてみたい。そんな、役者としての興味も勿論ありましたが、自分が中原中也になって色々な景色を見てみたいという思いもあったのではないかと思います。そこから、僕はいつか中原中也を演じるために、中也の詩にメロディを付け始めました。それから数年、ついに2016年、「詩人・中原中也の世界〜在りし日の歌〜」という一人舞台を発表しました。幼い頃にサーカスに行った中也が、そこで初めて芸術に出会い、そこからずっと芸術というものを考え続けながら30歳で亡くなるまでの、彼の壮絶な人生を、音楽や声や詩や言葉や身体で表現した作品です。その後も、毎年のように上演していますが、その都度、作品は形を変え、進化し続けています。」11月3日 10時52分