猫沢エミのインスタグラム(necozawaemi) - 11月3日 23時33分
だから嫌なのだ。なにが理由であっても自分の生まれた場所へ帰ってくることは、内臓からひょっこりと、なにがが顔を出してしまうから。
死んだような時間の流れる夜の町に、スナックから漏れるカラオケの歌声。それはまるで、裏道にたったひとつちいさく光る、青白い街灯のように現世から切り離され、ぽっかりと浮かんでいる。
子供のころ、お風呂に入っていたとき『あ…UFOだ。エミと一緒にいると、よくUFOを見るなぁ。』と父が言った。異界のものをよく見ていた父。でも私にはひとつも見えなかったから、あれは父だけの世界の幻だったのだろう。
あのお風呂と同じ風呂の脇にある洗面所をふと見やると、亡くなって一年も経つというのに、父が愛用していたブラバスが置いてあった。ブラバスだけではない。どの引き出しにも、父の破片が亡くなった日そのままにしてあって、すこし胸が苦しくなった。その苦しさと同じだけ、母の切ないロマンスを感じた。
あんなにひどい男だったのに…という訝しさは、恋人同士からしてみれば他人に当たる私の、それこそ勝手な妄想にすぎないのだろうか。
星が強くまたたいて、昼間リッツボンのラジオから流れていたキリンジのエイリアンズが、また脳内で流れ始めた。
エイリアンズとは、愛し合う私の父と母のことである。
#ブラックファミリーヒストリー
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2018/11/3