福田里香のインスタグラム(riccafukuda) - 12月3日 03時42分
#この世界の片隅に
覚え書き(長いからみんなは読まなくていいよ)。
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私の考える最良のフード配分をこのアニメに観た。
私がフードアニメと呼びたいのはこの感じ。
さもおいしそうでしょというこれ見よがしじゃなく、フード演出はこれくらいさりげない出方の塩梅が圧倒的に好み。
フードポルノやフードドーピングじゃないのが正直で善い。
と同時に本当の意味でファッションアニメの傑作だと感じた。
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漏れ聞こえる噂ではフード演出が全面に出ているのかなと感じたけどむしろ洋裁演出に目を奪われた。
ファッション映画というと無意識に「プラダを着た悪魔」とかファッション業界物を想定してしまうが、じつはそうじゃないと思う。
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主人公すずは、お洒落さんじゃないし、監督は「私この服だ〜いすき❤️」とかダサい説明台詞を一切言わせなかったけど、彼女なりの服への頓着加減はきちんと%で測れるほど精確に描かれていたと思う。
たとえば、すずの目線から描くことで、いつも壁にかけられてるバッグが超お気に入りだとわかる。
素晴らしい。
しかもあのバッグが最後にどうなったと思う?……胸が潰れない女子なんていない。
すずは服派じゃなくてバッグ大事派だ。
みんな知ってることだと思うけど、お気に入りのバッグと「私」は一心同体だよ。
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椿(の柄)についてもどれだけ行間が深読みできることだろうか。
最後のほうで、あのひとが行李から取り出すあの服とか、リメイクされて3人に着られることになるあの服とか。
服って本来そういうものだと膝を打つエピソードばかりだ。
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自分で服を、料理を工夫すること、自分の手を動かすことの喜びが精密にちゃんと描かれているのです。
それが結果として戦争の真実を描いたことに繋がり、周辺を丹念に掘り起こすことで悲劇の本質がくっきり浮かび上がる。
その構成力に舌を巻く。
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洋裁に関しては「装苑をはじめ多くの女性誌になぜずっと型紙がついていなくてはならなかったのか?」の答が映画の中にある。
誰の許可もいらず思い思いの服で装うこと。
それは自由の象徴だからです。
私は自由……これほど素晴らしいことがこの世にあるだろうか?
だからクレジット後のあのシーンで号泣ですよ。
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しかもこのアニメのタイトルは「服物語」とか「フード物語」じゃないんです。
つまり物語は、服素敵!とか料理おいしい!=それで救われたっていうそんな単純な結論じゃないんです。
本質は他のところにある。
服や料理はあくまでそれを際立たせるための「演出」にすぎないのに、ふっと期せずしてそのシーンに服やフードの本質が顕現する。
私はこの塩梅が昔から好きだ。
なぜなら敬虔な気持ちで何かに祈りを捧げたくなるからです。
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フード好きもぜひ観るといい。だが服好きこそ見逃してはいけないアニメだと思う。
流行の服が流行の絵柄でお洒落に上手に描ける、というのとはまた違った意味で、原作のこうの史代さんが描く洋服は素敵でかわいい。
古びない、というか、こうのさんの引く線の中には、エバーグリーンみが入ってる。
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とはいえ画像は店頭ポスターより。
すずのバケツの中身は食用野草の花(現在、世界のファインレストランのトレンドがこれど真ん中って事実にカート・ヴォネガットみを勝手に感じる)。
カタバミ、白タンポポ、スギナ、ネギ坊主、ハコベラ、奥の野辺には菫の花の紫が。
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2016/12/3