SPURのインスタグラム(spurmagazine) - 12月18日 10時08分

【絶品玉子焼き学・特論】

寿司ネタ以外に、甘い玉子焼きがあるなんて！！ 物心ついたときから「玉子焼き＝甘くないだし巻き」という環境で育ちました。社会人になり上京したての頃、初めて甘い玉子焼きを体験したときは、ラッシュ時の満員電車に匹敵するほどの衝撃が走りました。忘れもしない、入社初日のお弁当事件。会社の近くにワンコインで美味しい手作り弁当を売る名店があると上司に教わり、お昼どきの長蛇の列をくぐり抜けてようやくありつけた日替わり玄米弁当には、定番の玉子焼きもばっちり彩りに加わっていました。好きなものは最後までとっておくタチなので、しめはひと口サイズの黄色いロール。最後のお楽しみを口の中へと運んだ瞬間、事件は起こったのです。塩味のはずの玉子焼きが、甘い……。なな、なんじゃこりゃあ！

あの日の衝撃から喜びも悲しみも幾年月。結論から言うと甘い玉子焼きにもすっかり慣れ親しみ、今や大好物のひとつ。ただ、てっきり塩味がくるものだとスタンバイしているところに不意打ちで甘みが放り込まれると、その瞬間は軽いパニック状態になります。口の中は口の中なりに心の準備というものがあるみたいです。

されど、事件を乗り越えたからこそ特別な愛情はわき起るもの。今となっては、あんなに邪道だと思っていた甘い玉子焼きの方がむしろ好きかもしれません。ということで、最近巡り合った絶品の玉子焼きをご紹介します。目黒にあるHIGASHI-YAMA Tokyoの1,500円ランチ。メインの玉子焼きに、ご飯、お味噌汁、お新香という実にシンプルな献立です。一見もの足りなさを感じてしまいますが、主菜の玉子焼きは一本まるごと贅沢にひとり占めできるんです。ジューシーでふかふかの厚焼き玉子を丸々一本となると、けっこうな満足感。さらに口の中いっぱいに広がる上品な甘さは絶妙です。あと、ここが一番のポイントなのですが、サポート陣の味噌汁とお新香が、玉子焼きがもたらす甘みの合間を縫って塩味もしっかりと差し込んでくれる。その計算されたバランスは一度食べたらやみつきになります。“玉子焼き甘い派”はもちろんですが、だんぜん塩味でしょ！という方にこそ一度は食べていただきたい、甘塩っぱい玉子焼きの真骨頂だと思います。（編集H）

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