村上隆のインスタグラム(takashipom) - 7月25日 11時32分


③主人公、マヒトらが色々あって宇都宮に到着し、庭での青鷺に対して執着するシーンを見て、戦時中の少年 手塚治虫との生き方との共振性、時代性を感じた。
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マヒトの庭の鳥、小動物への執着シーンを観ていて、手塚治虫とシンクロしてないか?と思いました。
手塚の幼少期、自力で虫の図鑑を作ったというエピソードは、ただ虫好きなだけかと思っていたのですが、戦時中、賢くセンシティブな子どもたちは、大人の理屈で展開している殺戮のリアルを理解し、全部引き受けてしまうと、精神崩壊を起こしてしまうので、その状態から身を守る術として、目の前のスモールワールドのリアリズムに集中したのではないかと、マヒトの鷺や庭の奥の不思議に集中する様を見て思ったのです。
故に、手塚はペンネームに「虫」を付けていた…とか。
よく考えてみると、手塚と同世代とも言える(言えないか…)宮﨑駿さんと養老孟司さんは非常に仲がよろしく、養老孟司さんも虫に対する執着は、常軌を逸してます。
戦時中センシティブな子ども達の保身術とはこういうことだったのか…と思いました。
IMAXとドルビーで観ましたが、どちらも効果音が微細で、リアルな日本のカラスの鳴き声や藪の中の情景音等、ミクロワールドへの強いこだわりがあり、その音に身を浸して、マヒトのメンタルの在り方を夢想できました。
ちなみに、今は子供たちはメタバース(オンラインゲームなど)に逃げていますね。

④下の世界における、西洋式帆船が大量に運航するシーンは、西欧列強のアジアへの植民地主義の情景描写ではないか?
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ベックリンの「死の島」に到着してマヒトが見る風景に、ひどく単純化された一見下手にも見える帆船が描き出されます。多くの人々が鑑賞後の感想で、それは、死への旅路のメタファーだ、と語っており、「紅の豚」における戦死者たちの飛行機群に似ている。そして画力が落ちた、となっていましたが、それだけでは無いんじゃないかと思いました。
キリコさんと食事をするシーンでも、窓の外には、これ見よがしに、西洋の帆船が海を走っています。そしてキリコさんとマヒトで魚を釣り上げて、その魚をある市場に持って行く時に、その市場で待ち構える帆船は、アジア式とも言えるような形状であって、遠方を走っている西洋式の帆船とは完全に違うデザインです。そこに乗っているのは、帽子を被った黒く痩せたアジア人のような幽霊達。
つまり、一見下手な西欧式帆船は、大航海時代、西欧列強の国々が、自分達の文化、宗教、それと利益を得るために、世界中の未開拓国を植民地化して行ったことの象徴的な絵なのではないかと。
アジアにおいては、アヘン戦争までの血塗られた歴史のメタファー(実体の無い帽子を被ったキャラクター達は、アヘン中毒者?)であったりとか。

しかし、ハヤオさん的には、植民地主義は負の部分のみではなく、そこで享受した西洋式の文化との出会いで進化した、リアルへの黙認を表現しているのではないかと思いました。
帆船が下手なのは、リアルにして固有の国を指し示したくはなかったからとも思いました。

⑤ワラワラは、出兵して行った日本の青年たち?
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怪魚を帽子を被ったアジア人風幽霊に分け与える、という流れからの、魚には滋養があるだの…のキリコの発言。
そしてワラワラが飛び立つと、ペリカンに食われるも、キリコはせめて腹一杯食わせられて良かった…とか。
それは、戦中の出兵した青年たちのメタファーなのか?と、思いました。

PART2
(3迄です)


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2023/7/25

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