中谷美紀のインスタグラム(mikinakatanioffiziell) - 6月5日 18時59分
皆様この週末はいかがお過ごしでしたか?
昨晩は旧東ドイツのドレスデンにおりました。
勉強不足により、東側ドイツにかように美しい都市があったことを知らず、東側というだけで、貧しく陰鬱な街を想像していたのですが、1945年に大規模な空襲を受けるまでは、ザクセン王国の栄華を反映した壮麗な街並みを誇っていたようです。
破壊された街は、少しずつ修繕を重ね、今もなおその途上にあるため、無駄な色彩のない石造りの街は、ところどころに継ぎはぎが見られます。
人間の愚かさによって毀損された街も、程度によるものの、人間の叡智によって復興が可能なのですね。
東ドイツ時代のファサードを残し、2017年に新装開館したカルチュアパラストは、ひとつひとつの楽器の音が粒だって響く素晴らしいコンサートホールでした。
この度のツアーの演目は以下の通りです。
ソフィア・グバイドゥーリナ
「おとぎ話の詩」1971年
ドミートリイ・ショスタコーヴィチ
交響曲第9番 1945年
アントニン・ドヴォルザーク
交響曲第6番 1880年
アンコール
ヨハン・シュトラウス2世
レモンの花咲くところ 1874年
個人的には調性を排したシンプルな音が連なる一曲目の「おとぎ話の詩」に痛く感激しました。
ヴァイオリンとヴィオラがピアニッシモで奏でる不協和音がとてつもなく美しく、またハープやマリンバ、グロッケン、ピアノの単調な音すらも不可思議かつ不穏な空気をただよわせており、深い森の中を彷徨うような、あるいは蜘蛛の巣に覆われた廃屋や迷宮に入り込み、目を凝らし、耳を澄まして恐る恐る歩みを進めつつ、必死で出口を探しているような感覚をおぼえます。
音と音との間に意図的にもたらされる静寂が、答えのない大きな課題を目の前に突きつけられて、拠り所を失い、困惑する現在の私たちの心情にしみじみと寄り添ってくれるのです。
ソフィア・グバイドゥーリナは、タタール系のロシア人ですが、ソビエト連邦が健在だった折に、伝統的な作曲技法を採らず、極めて実験的な現代音楽を模索していたため、当局から「職務怠慢」の烙印を押されたそうです。
しかし、スターリン体制のもと国威発揚のためのプロパガンダに利用されつつも、水面化で音楽に体制批判や皮肉を忍ばせていたというショスタコーヴィチが与えたアドバイスが、彼女の背中を押したとのこと。
「あなたは誤った道を歩み続けてください」
権力者に道をはばまれても、大衆に批判されても、己が道を進み、前人未踏の地平を切り拓いたソフィア・グバイドゥーリナは、さながら命を賭して単独無酸素で山に挑むアルピニストのようです。
ドとレを同時に弾いてはいけないと、いったい誰が言ったのでしょうか?
12の鍵盤を全て平等に扱う十二音技法による音楽も、優れた指揮者と優れた音楽家の深い解釈と巧みな表現力により、とても豊かな色彩を放つのだと、現在御年90歳だというソフィア・グバイドゥーリナが私たちに教えてくれています。
日本では武満徹さんに支持され、高松宮世界文化賞も受賞しているようですね。
明日より新たに始まる一週間を無事にお過ごしくださいませ。
在前东德德累斯顿,我看到了古老的城市景观和战后重建的错落有致。
Was für eine schöne Stadt Dresden ist.
Hätte ich broß ein bisschen mehr über die Geschichte des Deutschlandes gelernt!
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2022/6/5