君島良夫のインスタグラム(yosh_10) - 1月23日 23時40分


「成功率0%からの学び」

2016年 春
僕は早稲田大学ラグビー部のグラウンドにいた。

当時は、プロ選手としてプレーする傍ら
週に1度のオフを利用し
第二のキャリアを早稲田大学のキックコーチとして踏み出そうとしていた。

当時の早稲田大学には多くのスター選手がいたが、
その中で僕が任されたのは齋藤、岸岡という
1年生コンビ。

後に、大学日本一のハーフ団となる2人。

彼らとの出会いは、その後の僕のコーチングキャリアに大きな影響を与えた。

1年生ながら、その時2人のキックスキルは
すでに高いレベル。

そんな彼らに僕も
一つでも多くのことを伝えようと奮闘した。

秋になり、公式戦のシーズンが始まった。

開幕当初のメインキッカーは岸岡。
1年生ながらチームの司令塔であり、
ゲーム中のほとんどのキックを彼が担っていた。

ゴールキックも、春から積み上げきた成果が
少しずつ出始め、着実に得点を稼いでいく。

そして、2016年11月23日、
伝統の早慶戦。

初めての早慶戦で、
岸岡は大きな試練に直面した。

トライ数は早稲田5、慶應3と
試合展開としては早稲田がリードしていたものの、
ゴールキックが一度も成功しなかったのだ。

ゴール成功率、0%

超満員の秩父宮で、彼のキックはことごとく外れていった。

観客席で試合を見ながら、
岸岡の苦しみ、孤独が、容易に想像できた。

僕も同じように、苦しかった。

大歓声が響いているはずなのに、
周りの音が消えたように感じた。

キッカーを孤独にしてしまうのは、
コーチの責任。

もっと自分にできることはなかったか、
してあげられることはなかったか、
自問自答を繰り返す。

試合はなんとかリードを守りきり、勝利。

だが監督からは試合後に
「来週からゴールキッカーは齋藤でいこう」
と告げられた。

岸岡は、
頭の中で様々なイメージを浮かべて、
それを体現するのがずば抜けてうまい。

自分で問題提起して、
自分で解決方法を考える。
簡単に言えば、手が掛からないタイプ。

一方の齋藤は、コーチをうまく使う。
不安や疑問に思っていることは
すぐに相談する。
そして、納得するまで練習する。

対照的な2人だ。

それなのに当時の僕はまだ選手としての視点で見ていて、
各選手の個性を尊重できていなかった。

キックの蹴り方、考え方、練習方法を
自分のやり方で一方的に
岸岡に押し付けていたのだ。

猛省した。

頭の中は、あの満員の秩父宮の
焦る岸岡の孤独な後ろ姿で一杯だった。

押し付けるのではなく、
彼を尊重し、寄り添ってあげたかった。

彼をあんな風に孤独にしたくなかった。

彼ら2人からもらった一番大きな学びは、
選手の性格や特徴に応じて、
コーチングを変えなければならないということ。

その後彼らが卒業するまで、
メインゴールキッカーは、齋藤だった。

90%近い驚異的なゴール成功率を誇り、
彼は紛れもなく大学No.1キッカーの1人となる。

岸岡は、学年が上がるにつれ、
のびのびとプレーするようになった。

ロングキック、キックパス、グラバーキック、
そして何といっても、ドロップキック。

彼のキックスキルは
日本国内トップレベルに成長した。

岸岡が早稲田大学を卒業すると同時に、
JEKのアンバサダーを引き受けてもらった。

あの試合で彼を孤独にさせたことを
忘れないために。

そして、色々な事を乗り越えて
トップリーグや日本代表でプレーする
彼の成長に少しでも携わりたい。
そう思っている。

コーチは、教えることが仕事ではない。

選手に寄り添い、選手から学ぶこと。

ともに、成長すること。

僕は
あの時の気持ちをいつまでも忘れずに
1人でも多くの選手に影響を与え続けたい。

1人でも多くの選手の、孤独に寄り添いたい。

クラウドファンディング開始まで
あと4日!

@jekicking
#JEK #勝つためのゴールキック


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