猫沢エミのインスタグラム(necozawaemi) - 7月7日 14時03分

エトガル・ケレット2冊目、《クネレルのサマーキャンプ》読了。

ちょうどコロナの外出制限初期に買い求めたこの作品。現実世界が不安定になったからこそ、私にはどうしてもこの高度なファンタジーが必要でした。

表題になっている作品は、超短編の名手ケレットにしては珍しい、中編（とはいえ、超短編が連続して作られているところは従来の作風通り）なのだけど、読み進めるうちに、真摯に『頼むから、永遠にこの物語おわらないで！』と祈ってる自分がいた。

自殺した者だけが行く天国での、先もオチもまったく読めない奇想天外な話なのだけど、反対に、へー…天国ってごくふつうじゃんっていう日常性がこれまた可笑しい。

これは自殺で友達を亡くしたケレットの喪の仕事だ。自殺が罪とされる宗教観の国では、我々仏教徒にはない特別な背徳感や通念があるだろう。そんな世界で、ケレットは亡くなった友達が愉快に住める黄泉の国を作りたかったのかもしれない。だいぶヘンテコだけどね。😂

メメントモリ。死と向き合う、熟考するとは、暗いどころか生を爛々とまっこうするためのエネルギー採取なのだと私は思う。

間違った人、弱い人、嘘ばっかりつく人、そして自ら命を断つ人。だれもが良き人であり、愛すべき不完全な私たちだ。ケレットの人間に注がれる優しい眼差しは、まったく善人ヅラしていないから、ときにはケケケと斜に構えて笑い飛ばしたりもできる。だけど、こんなに真の意味で優しい人、私は見たことがないんだよな。

#猫沢図書館　#etgarkeret #knellershappycampers

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