偕成社のインスタグラム(kaiseisha_pr) - 5月25日 12時05分

「無事にきりぬけられたが、それで盗賊に目をつけられもしたな。」
きつねはつづけていうと、あらたまった顔つきになった。
「うけた恩はかえす。つぎにこまりごとがおこったなら、わたしを呼ぶといい。いつでもかけつけよう。わたしの名は、葉月（はつき）だ。」

「わかった。」
うなずいたものの、たとえなにかあっても、呼びはしないだろうと貞道は思った。きつねにたすけてもらわなくても、自分の力であっていく。自信はある。手ごたえも感じる。
「おれは平貞道だ。そっちも、こまったことがあれば、呼ぶといい。すぐにかけつける。」

きつねは、そんな貞道を、目をほそめてながめた。
「たよりにさせてもらおう、貞道。」

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