谷口礼子のインスタグラム(manekijako) - 12月28日 16時09分


寅さんに逢ってきた。

寅さんが出てくるシーンはどれも明るくて希望と元気に満ちあふれていて、
その時の「今」がそのままそこにあった。
抜けるような青空と渥美さんの声の明るさがどうしようもない。

ファンのわたしにはそれを見られただけでも十分すぎるほどの喜びだったけど、
あらたに「今」を描いた部分で、声を出して泣きそうなのを必死にこらえたところがあった。

人は、必ず失敗する。
その時の感情に流されたり、振り回されたりして、判断を間違える。
大事な時に間違えて、後悔することも多い。

でも、そんなときに、声をかけてくれる人がいることはなんてありがたいんだろう。
「おせっかいかな」と思いながらも、「落ち着いて」とか「助けるよ」とか。
その気持ちがありがたくて、実際はその時点では本当の答えにたどり着けていなくても、
「そうね、そうしてみる」と、踏み出せることもある。
納得というのは、自分ひとりでできない場合も多い。
人生の大事な局面に差し掛かった人に対して他人があげられるのは、
正しい答えなんかではなくて、その人を思う気持ちだけだ。
でもそれが、人と人との大事なつながりなんだ。
ーーー
「逢えて本当によかったわ」
寅さんは、その言葉をいつも誰かにもらっていた。
そして、今、満男がその言葉をもらっていた。
その言葉をもらえる人になった。それは本当にうれしく切なく優しく美しかった。

逢えてよかったというのは、たとえそれ以上のなんでもなかったとしても、最高のことだ。
逢えてよかったと思うこと、そしてそれを伝えること。
それ以上のなんでもなかったとしても、
少なくとも次の日から生きていけるような気がするんだ。

全48作のマドンナが、まるでニューシネマパラダイスのキスシーンみたいに、めくるめいた。
美しくて、切なくて、つらかった。

寅さんは、いない。
渥美さんはもういないし、なんなら映画はつくりものである。

でも確かに、寅さんはいる。いた。今もいる。
絶対にいるし、いると思うわたしを、世界中の誰も、とめることはできない。
そして同じように、寅さんの存在を当たり前のように感じている人は、たくさんいた。

満席の映画館でたくさんの人が息をしていた。
笑い、息をのみ、涙を流し、終わったころには拍手をした。
みんな寅さんに逢いに来ていた。こんなにたくさんの人が。

人間が生きている時には、絶対に音が出るもんだ。
人はそれぞれ違うんだから、反応も様々だ。
隣のおじさんが涙をずっとぬぐっていた。
逆のおじさんはすぐに笑う人だった。
それを全部ひっくるめて寅さんだった。これが寅さんだった。
隣の人を許せた。
みんな、ダメなんだ。ダメでいいんだ。

ーーー
わたしは俳優だ。
30代も半ばを過ぎた。
特別な取り柄もなく、若くて元気いっぱいな時間も、残り少なくなってくる。
テレビをつければ、美しい人やものや場所ばかりが目に飛び込んでくる。
でも。

俳優の仕事はいつまでも綺麗に若くいることではなくて、きちんと歳を重ねることだと思った。
生活をし、近くにいてくれる人を愛し、きちんと心を伝え、生きる。
その時の自分の「今」をもっと強く感じたい。それがお芝居だと思った。 「逢えて本当によかったわ」
わたしもそう言いたい。寅さんに逢えてよかった。それがわたしの人生を決めた。
わたしが今、大切に思っている場所や人、仕事や死生観は、間違っていなかったと思う。
少なくとも、気づかないうちに、なにかのひとつの筋道上にあった。

大丈夫だ。
やっていける。
よくわからないけどやっていける気がする。

人を、愛せる気がする。

それがわたしが受け取った、メッセージだった。
ーーー
※写真は寅さん記念館にあるくるまやセットに貼られている紙。映画の中で映り込むこの言葉が好きだった。

#お帰り寅さん #寅さん #男はつらいよ50周年プロジェクト #男はつらいよ #男はつらいよお帰り寅さん


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2019/12/28

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