植田夢月さんのインスタグラム写真 - (植田夢月Instagram)「#いつも長文ですみません 11/13-17 Freerider(フリーライダー) / 5.13a, 約30P Top Out 今回の旅の大きな目標は二つだった。一つは、アストロマンの完登。もう一つは、フリーライダーというルートを通って、エルキャピタンの頂上まで登ること。ビッグウォールが初めての自分たちは、頂上まで抜けることすらできるか分からない。予想もしないトラブルがあるかもしれない。荷揚げやユマールの疲労で、クライミングどころではなくなるかもしれない。なので、各ピッチのフリー完登は「できたらする」くらいに考えていた。詳細な行程については夫のmickipediaブログを見てほしいが、11/7にフリーブラスト含む9P目まで進んだ後、11/11に10P目まで荷揚げ。11/13にゴーアップ開始。壁の中で計5日間を過ごし、11/17の夜にエルキャピタンの頂上に辿り着くことができた。そして、クライミングの方は、かなりパートナーの夫に頼ることになってしまったのだが、全ピッチ中約3/4をフリー完登することができた。これは嬉しい誤算だ。でも、もっと私が頑張らないと「二人で」完登したとは思えないだろう。核心ピッチは夫にリードしてもらったし、自分のリードしたピッチはものすごく時間をかけてしまった。さらに、最終日5日目には女子のアレの来襲があり(予定より1週間も早かったせいで備え無し笑えない)、身体的にも精神的にもユマール回収で精一杯だった。自分が余りにも情けないのと、パートナーに負担をかけ過ぎた負い目で、頂上に着いてから泣いた。安堵の気持ちと悔しい気持ちで綯い交ぜになりながらの登頂だった。一方で、自分たちが曲がりなりにもエルキャピタンの頂を踏んだという事実は、素直に嬉しい。頂上で一晩を明かした後、じわりじわりと感動が押し寄せた。あの憧れのエルキャピタンを登ったのか。夢じゃないのか。初めてのエルキャピタンでの生活、あの瞬間も、あの瞬間も、きっと一生忘れないだろう。 ---------------------------------------------- 同じくらい感動的だったのは、フリーライダーというルートの素晴らしさだ。フリーライダーは、エルキャピタン南西壁の大クラシックルート・Salathe(サラテ)の最上部核心ピッチを迂回する、いわば派生ルート。サラテのエイド初登は1961年(!)。フリー初登は1988年。エルキャピタンで最初にフリー化されたルートである(「フリー」の定義については「フリークライミング」でググってみてください)。フリーライダーの初登は1998年。エルキャピタンのフリールートの中で最も易しいルートであり、エルキャピタンをフリーで登りたいクライマーにとっておそらく最も人気のあるルートである。サラテは、エルキャピタンで最も「ナチュラルな」ルートとも言われている。つまり、ルートの殆どがクラック等の岩の節理を利用しての登攀となる。ボルトが必要なセクションはかなり少ない(アンカーのボルトはもちろんしっかり整備されてます)。まずそれだけで素晴らしい。これだけピッチ数があれば、いわば"つなぎ"のつまらないピッチがあっても不思議ではないのだが、驚くことにほぼない。エルキャプ補正もあるかもしれないが、どのピッチも特色があり、長さがあり(30mのピッチだと短く感じるほど)、大なり小なり核心があり、シングルピッチだとしても充実感がある内容。逆を言えば、簡単なグレードが付いているピッチも、全然気が抜けない。フリーライダー独自の派生部分も、「派生」という言葉が全く似合わない美しいクラック。そのまま山頂までクラックが続いていく。遠くから見ると、ただのつるっとした巨大な岩の塊。そこに、自然が造り出した明瞭な道が続いていて、人間が通れるようになっているということを身をもって体験して、ただただ感動してしまったのだ。 ---------------------------------------------- 今回、初エルキャプながら、なんとか山頂に立てたのは、ビッグウォールの先輩方から頂いた貴重なアドバイスのお陰に他なりません。ガメラさん、ハギさん、甲山さん、遠藤ゆかさん、長門さん、倉上さん、本当にありがとうございます。とりわけ、増本亮さん・さやかさん夫妻には、直前まで細かいこと含め色々なことを教えて頂き、励ましの言葉も頂き、更には壁の中でも偶然(?)遭遇してアドバイスを頂き、本当に助けられました。感謝の気持ちでいっぱいです。そして、パートナーである夫の幹也くん、ここまで連れてきてくれてありがとう。これからもよろしくね。」11月21日 8時51分