鈴木涼美のインスタグラム(suzumisuzuki) - 8月23日 19時57分

人は古い方、田舎の方、貧しい方、発展していない方、地味な方を「よい」と言いがちだ。人が少ない地方の山の中を「よいところですね」なんて言うし、電気も通ってない藁葺きの家を「よいおうち」なんて言うし、地元のパン屋さんの庶民的な一家を「よい家庭ですね」、その家の家業を手伝う高卒の娘を「よい娘さんですね」なんて言う。
でも山を切り開き、電気その他のインフラを通し、コンビニを作り、駅をつくり、人が集まるところに集まって、マンションをつくり、高層ビルをつくり、できるだけ富を得ようとして、人より勉強して、東大に入って、お金を稼いで、ネオン街をつくり、ブランド品が集まる百貨店をつくり、世界中のどこにでもあるような便利で派手でつまらない街にしたのは紛れもなく人で、しかも誰に強制されるわけでもなく、そうしたくてそうしたはず。
三日間ほぼ裸足かビーチサンダルで過ごした自然の残るよい田舎を出て、新幹線のなかで姫野カオルコの新刊を読み、都内に帰ってきてピンヒールに足を突っ込んで歌舞伎町のネイルサロンに入ってなんとなく不思議に思った。

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