SPURのインスタグラム(spurmagazine) - 5月6日 15時53分
【2つの「錯覚」を楽しむ器】
おかげさまで連休中は、ずいぶんゆっくり過ごしました。好天にも恵まれて、心も体もカラッと天日干しされたような気分になりました。
そんな洗いざらしの真っ白いシーツのような心境に呼応するかのごとく、昨日ふらっと立ち寄ったBEAMS JAPANの店内で目に飛び込んできたのが、この小さな豆皿でした。5階のfennica STUDIO @fennica_shinjuku で見つけた、瀬古有美さんの作品です。
瀬古さんは、益子焼の代表作家で人間国宝の濱田庄司氏が開窯した濱田窯で5年間修行した後に渡英。陶芸家のバーナード・リーチ氏が濱田氏と共に創設した、セント・アイヴスにあるリーチ・ポタリーでも研鑽を積み、帰国後に都内で独立した陶芸家です。
ツルンとした白磁器の表面から浮き出るように、規則正しく並ぶ三角の鱗模様。しばらく眺めていると、だんだん凹んでいる影の方が浮き上がって見えてきたりして、ちょっとした目の錯覚に惑わされます。そんな中でふと気づくのは、ひとつひとつの三角が同じ形状ではないこと。角の丸みや線の歪みなど、ほんのわずかな差だけど少しずつ印象が違っていて、ひとつとして同じものはありません。
これは、すべてが丁寧に手彫りされている証。本来はシャープな幾何学模様のはずなのに、ポッテリとした器の造形も手伝って、実に繊細で柔らかな表情に仕上がっています。手仕事ならではの温もりによって生み出される、もうひとつの心地よい錯覚を感じた瞬間、これはもう買って帰るしかないと確信しました。
帰ってからもぼんやり眺めてみるのですが、本当に見ていて飽きません。白一色の世界に際立つ優しい立体模様は、この他にも数種類あります。様々な図柄の静かな躍動を見ていると、お気に入りの一枚と言わず全部そろえたくなる衝動に駆られます。そこをなんとか堪えて一枚だけにとどめた豆皿シリーズは 2,400円。BEAMS JAPAN5階の fennica STUDIO で販売中です。
夏の食卓に涼を運んでくれそうな、瀬古さんの白いうつわのお話でした。
うつわといえば、発売中のSPUR6月号「うつわ」特集も、どうぞお見逃しなきよう。(編集H)
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2016/5/6